夜を駆け抜けろ! Entry : 指の手術

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指の手術

本日は…「も」…大きな手術がないので、勉強して暮らし…って、小さな手術はありましたが^^;
親指の靭帯損傷でして、こけたときに尺側(小指側)の靱帯を切ったという状態です。
要は、手をついたときに親指が思いっきり外側を向いて靱帯がブチッといって脱臼したという状態です。
…訳が分からない?
まぁレントゲンはこんな感じでした↓
右母指尺側側副靭帯損傷
どこがどうなってるのかって?

母指尺側側副靭帯損傷のシェーマ
まず母指が外転強制(外側に思いっきり開く状態)されて脱臼すると同時に、尺側(この場合は小指側…内側と言った方が分かりやすいかな?)の靱帯が切れます。
マズいことに、この部位では大抵は基節骨側の付着部で剥離してしまうことが多いので、縫い代が無くなることが良くあります。
剥離骨折が起きるとまた別の話になるのですが、今回は骨折はなさそうでしたので、靱帯修復を中心に考えます。
で、実際に開けてみると、ブチッと切れた靱帯がプラプラになってまして、そいつを何とか縫いつけるために、骨の中に埋める糸付きの小さなアンカーを使いました。
修復方法のシェーマ
図のように、小さな糸付きアンカーを基節骨の尺側に打ち込み、切れた側副靭帯に糸をかけ、縫いつけます。
この時に同時に破れた関節包なんかも縫っているのですが、それは省略します。
…タブレットを使ってないため、作画能力に難がありますので…。
あと、縫う前に母指がうっかり外転して縫ったところがブチッといってしまわないために、基節骨と中手骨を鋼線で串刺しにして、固定しておきます。

出来上がりはこんな感じです↓
右母指尺側側副靭帯損傷修復術後正面
アンカーや鋼線がレントゲン写真に写ってます。
あとは3~4週間このまま固定しておいて、縫った部位が瘢痕組織でくっつくのを待つばかりです。

さて、今日は手術がこの一件だけだった&今夜は(も)当直なので、時間が少々あります。
このエントリーを書くだけである程度消費してしまいましたがそこはそれ、医学的な知識をまとめるという意味で、自分の勉強になりますので。

そういや専門医試験にも、この靱帯の損傷の話は良く出てくるんですよね。
この靱帯の損傷は、"gamekeeper's thumb"と英語で習慣的に表記されるのですが、これがまたこんな問題が出たりして意表をつかれます。

問 gamekeeper's thumbについて正しいのはどれか、二つ選べ。
(1) サッカーのゴールキーパーが突き指で受傷することから、この名がある。
(2) 母指MP関節尺側側副靭帯断裂をいう。
(3) 診断にはMP関節屈曲位でのストレスX線撮影が有用である。
(4) 完全断裂でも手術適応になることは少なく、保存的治療が行われる。
(5) 変形性関節症の原因とはならない。

ついうっかり(1)と(2)を選んでしまいそうになりますが、これは元ネタを知っていないと絶対分かりません。
もともと英国で兎狩りをしているときに、獲物の兎のクビをきゅっと絞める係の人がいるのですが、この係のことを"gamekeeper"と呼びます。
兎のクビを絞めるときに、この靱帯の損傷を起こしやすいとのことで、"gamekeeper's thumb(gamekeeperの親指)"と言うようになったということなのです。
それなんてトリビアというツッコミはさておき、なんで専門医の試験に、こんな小ネタを覚えておかねばならないのかは、謎であります。

ちなみに正解は(2)と(3)です。
(1)は、サッカーのゴールキーパーの突き指で生じる指の怪我は主に槌指で、部位が全然違います(槌指は末節骨)。
(4)は本日手術したように、靱帯の完全断裂が生じるとStener lesionと呼ばれる靱帯の翻転が生じるため、靱帯の自然癒合は得られず、保存的には治癒不可能な状態になります。
(5)は一旦脱臼を生じてますので、変形性関節症の原因に十分なり得ます。
まぁ一般的善良な生活をしていれば、関係のないことばかりですが。

…取り敢えず試験勉強してきます…orz


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